主題;「擬音語・擬態語」について
私たちの日常で何気なく使っている言葉の中に、擬音語・擬態語というものがあります。 擬音語・擬態語というと何やら厳めしいのですが、「きゃんきゃん」「にゃんにゃん」「がたがた」などが擬音語。つまり、現実の世界の物音や声を私たちの発音で写しとった言葉。そして、「うとうと」「きらきら」「ゆらりゆらり」などが擬態語。すなわち、現実世界の状態を私たちの発音でいかにもそれらしく写しとった言葉、をいいます。 この擬音語・擬態語は、日本語に豊富に存在し、日本語を特色づける言葉と言われます。分量から言っても、欧米語や中国語の三倍から五倍も存在しているとのことです。 今回は、この擬音語・擬態語の中から「ABAB」の形で表されるものを独断と偏見で選び、その解説を調べてみました。 日頃のお喋りのご参考となれば良いのですが。 |
1.あんあん(an-an) |
大きく口をあけて声を出しながら泣く声、またその様子。 「居並ぶ人たちも『おっちやん、おっちやん』と言うて、アンアン泣きよるねん」(朝日新聞01・09・03) |
◇ 類義語 「わんわん」 |
「あんあん」が哀れな泣き方であるのに対し、「わんわん」は、うるさくわめき立てて泣く感じ。 |
◆ 参 考 |
韓国語でも子供が泣くような声は、「あんあん」に近い語で表す。 |
2.かんかん(kan-kan) |
① 金属や石などのかたい物が打ち当たって出る音。 「出刃包丁か何かで流許(ながしもと)の氷をかんかんと打割るというは暖い国では見られない図だ」(島崎藤村『千曲川のスケッチ』) |
② 日の光が強く照りつける様子。また、灯火や電灯が明るく点(つ)いている様子。 「何しろ日がかんかん当たっている癖に靄がいっぱいなんでしょう」(夏目漱石『彼岸過迄』) |
③ 炭火などの火が強くおこる様子。 「食後、座敷の大きな火鉢にかんかん火を熾(おこ)して」(志賀直哉『雪の日』) |
④ はげしく怒る様子。 「そんなことをこれっぽっちでも云ってみろ、のぶ公はかんかんになって怒るぞ」(山本周五郎『さぶ』) |
⑤ かたく凍る様子。また、寒くて空気が冴えわたっている様子。氷をたたくと、かんか んと音がすることからいう。 「冬の空はよく晴れて、カンカンいうような空気の中で、遠い連山がくっきりと近く見えた」(斎藤隆介『ゆき』) |
◇ 類義語 「かん」「か-ん」「かんっ」 |
すべて①の類義語。「かんかん」が何度も打ち当たる音をいうのに対し、「かん」「かーん」「かんっ」は一度だけの音。「かーん」は鳴った音の響きが長く続き、「かんっ」は鳴った音がすぐにおさまる感じがある。 |
◆ 参 考 |
幼児語で髪やかんざしをいう「かんかん」がある。「母がああ好くかんかんが結えましたねと賞めると」(夏目漱石『彼岸過迄』)。これは、「髪」の撥音便形「かん」を繰り返したものから。 また、「かんかん帽」という麦藁でかたく編んだ男子用の夏の帽子があるが、これは②の強い日射しをさえぎることからの命名か。 |
3.ざんざん(zan-zan) |
雨が激しく降る様子。 「あくる日は日曜日の雨、裏の森にざんざん降って」(田山花袋『蒲団』)。 「ざんざん降り」とか「ざんざ降り」という語もある。「ざんざ降りの中を金魚のようにゆられて川添いに戻る」(林芙美子『放浪記』) |
◆ 参 考 |
宮沢賢治『春と修羅』第三集「圃道」に、「ざんざんざんざん木も藪も鳴ってゐるのはその重い つめたい雫が いま落ちてゐる最中なのだ」の例があるが、一般的な用法ではない。 |
4.たんたん(tan-tan) |
鼓や舌などを鳴らす音。 「その男は窓の下まで這ってきて、タンタンと舌を鳴らしたのである」(三浦哲郎『忍ぶ川』)、「舌鼓たんたんと打ち」(浄瑠璃『堀川波鼓』) |
◆ 参 考 |
鎌倉時代から見られる語。 「さみだれに つつみの滝の 水増さり 岩打つ音は たんたんとなる」(『為忠集』)。この和歌は、「堤(つつみ)が湛湛(たんたん)と成る(=堤が水でいっぱいとなる)」と「鼓がたんたんと鳴る」の意味が掛けられている。 |
5.なよなよ(nayo-nayo) |
① 細長い物が力なく萎え、曲がったり倒れかかったりしている様子。弱々しさを表す一方で、完全に折れてしまわないしなやかさも表す。 「馬は・・・、突張った脚もなよなよとして身震をしたが」(泉鏡花『高野聖』) |
② 印象や態度が弱々しくはかない様子。主にひ弱なことをいう「なよなよした(人)」「なよっちい(奴)」もこの意味である。 「彼女の姿は、・・・なよなよと夢のようで」(江戸川乱歩『虫』) |
◆ 参 考 |
平安時代から見られる語。「なよなよとして、ものも言はず、息もしはべらず」(『源氏物語』)。「なよなよ」は「なよ」をくり返した語だが、この「なよ」から派生した語には古く、物や態度が柔らかく優美であることを表す「なよぶ」「なよよか」「なよやか」などがあった。また、「なゆ」ともいい、若くしなやかな竹は「なよ竹」(「なよ竹のかくや姫」の「なよ竹」)とも「なゆ竹」ともいった。語源的には「萎ゆ(なゆ)」(今の「萎える」)と関係があると考えられる。 |
6.ばんばん、ぱんぱん |
6‐1) ばんばん(ban-ban) |
① 机や戸などを手で強く、続けてたたく音。 「この間、眠けを覚まそうとバンバン自分の顔を叩いてるオヤジがいてさ」(女性自身00・12・26合併号) |
② 何かが連続して破裂したり、銃を連続発射した時の音。 「バンバンという発砲音が遠くから響いてきた」 |
③ 精力的に仕事をこなす様子、または物事が順調に進んでいる様子や機械が順調に勢いよく動いている様子。 「エンジンだってバンバン回る540iの4.4リッター V8がそのまんま積まれてて」(SPA!00・12・20号) |
④ 無遠慮に何かをする様子。「不平不満をばんばんぶつけ合った」、「人の欠点をばんばん指摘する」 |
◇ 類義語 「ぱんぱん」「ばりばり」「ばしばし」 |
「ぱんぱん」は①②の類義語。「ばんばん」よりも軽く乾いた音を示す。「ばりばり」は③の類義語。「ばんばん」よりも更に精力的に仕事をする感じ、勢いよく機械が動いている感じになる。「彼はばりばり仕事をする」。「ばしばし」は④の類義語。「ばんばん」よりも更に手厳しい印象になる。「人の欠点をばしばし指摘する」 |
6‐2) ぱんぱん(pan-pan)![]() |
① 机や戸を続けてたたく音。 「さらにお尻をパンパンたたいてもらうと」(女性自身00・19・05号) |
② 何かが連続して破裂したり、銃を連続発射した時の音。 「ぱんぱんと鉄砲をうつような音も聞こえていた」(有島武郎『火事とポチ』) |
③ 風船などがはち切れんばかりに膨らんでいる様子や、筋肉などがかたく張っている様子。 「肩がパンパンで、自信はなかったんです」(日刊スポーツ00・12・04) |
7.むかむか、むくむく、むらむら、むちむち、むんむん |
7-1) むかむか(muka-muka)![]() |
① 怒りがこみ上げてくる様子。 「娘はウキウキ、私はムカムカ」(Hanako00・12・20号) |
② 吐き気がこみ上げてくる様子。 「口は酒臭く、胃袋の辺りはムカムカと吐き気が切迫してきている」(日本経済新聞夕刊01・01・04) |
③ 怒り以外の何らかの感情が胸中に湧き上がってくる様子。「彼を衝動(そそ)って盗性がむかむかと首を擡げつつあったのである」(長塚節『土』) |
◇ 類義語 「むかっ」 |
「むかっ」は①②の類義語。急に怒りや吐き気がこみ上げてくるという、瞬間的な様子を示す。それに対して「むかむか」は、怒りの感情や吐き気が継続して感じられている様子を示す。 |
◆ 参 考 |
「むかむか」は、古くは「さる程に、任(じん)氏はむかむかと楽しうなったぞ」(『史記抄』)のように、プラスの感情がこみ上げてくる様子についても使われた例がある。 |
7-2) むくむく(muku-muku)![]() |
① 人や物がうごめきながら起き上がってくる様子。 「(犬塚山次は)蒼い顔をして寝ていたが、やがてむくむくと起き上がると」(井上靖『あすなろ物語』) |
② 物がうごめきながら盛り上がったり膨張したりする様子。雲が湧き上がったりする時の形容によく使われる。 「むくむくと湧き上る雲の流れを私は昼の蚊帳の中から眺めていた」(林芙美子『放浪記』) |
③ 何らかの感情が、抑えようもなく胸中に湧き上がってくる様子。 「発育に伴なう彼の生気は、いくら抑え付けられても、下からむくむくと頭を擡げた」(夏目漱石『道草』) |
④ 何かがもぞもぞとうごめく様子。気味が悪い・不快だという感情を伴う場合が多い。 「今日は喉がほてったり、むくむく動きそうだったりする」(大江傭三郎『他人の足』) |
⑤ 植物の葉や動物の毛が密生してボリュームのある様子。 「ただ渓間にむくむくと茂っている椎の樹が」(梶井基次郎『蒼穹』) |
⑥ 物がやわらかくて厚みのある様子。または、人が丸々と太っている様子。 「いつでも縞のフラネルをきて、むくむくした上靴を足に穿いて」(夏目漱石『永日小品』) |
◇ 類義語 「むくっ」「むかむか」 |
「むくっ」は①②の類義語。「むくむく」が徐々に起き上がったり膨張したりする継続的な動きを示すのに対して、「むくっ」は急に起き上がったり盛り上がったりする瞬間的な動きを示す。 「むかむか」は③の類義語。「むくむく」が、抑えようとしているのに抑えようもなく感情が湧き上がる点に重点があるのに対して、「むかむか」は抑えようとする意志の有無に関係なく、生理的に感情が湧き上がってくる様子を示す。 |
7-3) むちむち(muchi-muchi) |
① 腕や腿(もも)などの肉づきがよく、弾力に富んで張りがある様子。 「超ミニはいてるわりに脚太いし、二の腕はムチムチ」(SPA!00・12・20号) |
② 弾力に富んで、歯ごたえのある様子。 「新種発見!ムチムチ和菓子」(朝日新聞01・01・07) |
◇ 類義語 「むっちり」 |
「むちむち」が弾力に富んで張りがある様子を表すのに対し、「むっちり」は中身がしっかり詰まって重量感のある様子を表す。 |
7-4) むらむら(mura-mura)![]() |
① 群がっている様子。 「凌霄(のうぜん)の燃えるような花が簇々(むらむら)と咲いている」(森鴎外『ヰタ・セクスアリス』)の「簇(むら)」の字は、竹が群生する様子を表す。 |
② 生き物が群れをなして集まったり、移動したりする様子。 「雉子鳩(きじばと)が、神代に島の湧いたように、むらむらと寄せて来る」(泉鏡花『婦系図』) また、群れになっているものが突如として四方に散る様子を「むらむらぱっと」という。 「そろそろ肉が無くなって、群鳥は二羽立ち、五羽立ち、むらむらぱっと大部分飛び立ち、あとには三羽、まだ肉を捜して居残り」(太宰治『竹青』) |
③ 雲や煙などが勢いよく立ち上る様子。 「雪まみれになって、口から白い息をむらむらと吐き出す」(有島武郎『生れ出づる悩み』) |
④ 抑えがたい好奇心や愛情や怒り等の感情が急にわき起こる様子。 「心の中には一種の好奇心がむらむらと起こってきました」(小酒井不木『メデューサの首』) |
◇ 類義語 「むらむらっ」 |
「むらむら」よりも「むらむらっ」の方が、より一層勢いが盛んな様子を表す。「女房の顔を見ると、むらむらっとして来て、おい、茶を持って来い」(太宰治『新釈諸国噺』) |
7-5) むんむん(mun-mun)![]() |
熱気や暑気、強烈なにおいや大勢の人の息などが立ちこめて、辺り一帯に充満している様子。肌にまとわりつくような不快感を伴う場合が多い。 「彼(彼女)と一緒にいられるだけで幸せ!という空気が、ホール中にムンムンと漂う」(佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』) 江戸時代から見られる語で、古くは吐き気を催す様を表した。『和英語林集成』の「むんむん」の項には「胃のむかつきや吐き気を感じる」とある。 |
◇ 類義語 「むんむ」「むっ」「むん」 |
「むんむ」は「むんむん」に比べて立ちこめ方が強い。「エネルギツシュな気魂が、竹さんの身辺にムンムとまといついている」(石坂洋次郎『石中先生行状記』)。「むっ」は熱気やにおいなどが瞬間的に押し寄せてきて、息がつまるような様子を表す。「暖い空気が煙草の煙を含んでむっとするほど彼を取り囲んだ」(福永武彦『死の島』)。「むん」は「むっ」に比べて押し寄せてくる勢いが強い。「うす化粧のにおいが、汗にまじって、むんと鼻をつく」(芥川龍之介『楡盗』)。なお、「むんむ」「むん」は現代ではほとんど用いない。 |
8.よたよた、よちよち、よぼよぼ、よれよれ、よろよろ |
8-1) よたよた(yota-yota)![]() |
① 重い足どりでふらつきながら、一歩一歩たどたどしく歩く様子。 「入代りにモノローグと云って日本の落語家のような事をやる男が海老のように顔を赤く塗り・・・酔どれのような風付(ふうつき)でよたよたと舞台へ出る」(永井荷風『ふらんす物語』) |
② 気持ちが決まらず揺れ動く様子。 「一歩なかへはいれば実はひかげの草のようなひ弱い気持がよたよたしていた」(幸田文『こんなこと』) |
◆ 参 考 |
東京落語で愚か者の代表といえば「与太郎」であるが、「与太郎」の「与太」については諸説があり、語源的には不明である。 江戸時代から明治時代にかけて「与太者」「与太話」「与太る」「与太を言う」などの言い方が生まれた。これらは「与太郎」の「与太」をもとに派生したとされる。その背後の語感には、ふらふらしていてまっすぐに歩けず、道を外れるような「よたよた」の「よた」のイメージも多少あずかっていたのではないかと思われる。 |
8-2) よちよち(yochi-yochi)![]() |
幼児や老人などが、小さな歩幅でたどたどしく、おぼつかない足取りで歩く様子。 「腰がすっかり曲がってしまって、歩くのも大儀そうだ。杖をついてよちよち歩いてね」(北杜夫『楡家の人びと』) |
8-3) よぼよぼ(yobo-yobo)![]() |
① 力のない足取りで歩く様子。また、年をとっていて身体の衰えた様子。 「おばあさんは・・・『はい、ありがとうございます』と、いいながら、又ヨボヨボ向うへ行ってしまいました」(菊池寛『納豆合戦』) |
② 年老いてみすぼらしい様子。「がいこつのようなよぼよぼの爺さんが一人と、四人の女。私だけが肩上げをして若い」(林芙美子『放浪記』) |
◆ 参 考 |
江戸時代には「よぼ」をもとに派生した動詞「よぼける」「よぼつく」があった。「向うからよぼけたやうな男が来る」(『軽口笑布袋』)、「これは足がよぼついて持にくい」(『諺臍の宿替』)。「よぼける」は老いて耄碌(もうろく)する意味、「よぼつく」は足がよろめく意味。また、「よぼける」の名詞「よぼけ」や「よぼけおやじ」の語もあって、老いぼれた老人を意味した。 |
8-4) よれよれ(yore-yore)![]() |
衣服が、しわになったり型崩れしている様子。 「よれよれのオーバーを着た四十二三の、痩せた風采のあがらぬ男だった」(松本漬張『点と線』) |
◇ 類義語 「しわくちや」 |
「よれよれ」は生地が傷んで張りがなくなっている様子、「しわくちや」は生地自体は傷まず、一時的にしわになっている様子。 |
◆ 参 考 |
「よれよれ」は、ねじれる意味の動詞「撚れる」の語幹と関係のある語。 |
8-5) よろよろ(yoro-yoro)![]() |
① 足がふらついて倒れそうになる様子。 「ひきよせられるように耕作さんは、よろよろと、あとを追いました」(瀬尾七重『かしわ森山の少女たち』) |
② 動作が不安定でふらつく様子。 「わたしはよろよろ立ち上りながら、夫の側へ近寄りました」(芥川龍之介『藪の中』) |
③ 今にも倒れそうなくらい弱々しい様子。 「野菊がよろよろと咲いている。民さんこれ野菊がと僕は吾知らず足を留めたけれど」(伊藤左千夫『野菊の墓』) |
◇ 類義語 「よちよち」「よたよた」 |
共に①の類義語。「よろよろ」は足がふらついて倒れそうな歩き方の様子をいうのに対し、「よちよち」は歩幅が狭くて不安定な足取りをいい、主に幼児の歩き方についていう。また、「よたよた」は重い足取りでたどたどしく歩く様子。 |
◆ 参 考 |
かつて「よろめきドラマ」というのがあった。誘惑に負けて、人の道を外れてしまう人妻を中心にしたドラマのことをいった。 |
9.りんりん、るんるん、れろれろ |
9-1) りんりん(rin-rin)![]() |
① 鈴虫や松虫など虫の鳴く音。静岡の方言で鈴虫を「りんりん虫」と言う。 |
② 鈴やベルが連続して鳴る音。 「雪の野道を、馬橇(ばそり)が:・りんりんと通った」(三浦哲郎『忍ぶ川』) |
③ 物音や人の声がよく通って響く様子。 「お母様の・・・間際に仰有ったお言葉が凛々(りんりん)とすき透って、私の耳に響いて来る」(夢野久作『押絵の奇蹟』) |
◇ 類義語 「りん」「りーん」 |
「りん」は②の類義語で一回、短く鳴る音。「りーん」は①②の類義語で、一回鳴る音や様子だが、「りん」よりは、やや長く響いて聞こえる感じ。 |
◆ 参 考 |
江戸時代、狂歌で、「りんりん」で始まり「りん」で終わる歌をいろいろな話を想定して面白く詠むという趣向があった。たとえば、お寺の風鈴を子供たちが欲しがり、和尚が風鈴をうまく詠んだ歌を作った子に風鈴をやるというと、一人の子が詠んだ。 「りんりんと 理もないことを 言ひだして これには和尚 困りけりりん」。 和尚は答えて詠んだ。 「りんりんと 理もないことを 言ひだして このりんやるのは あかんべろりん」 |
9-2) るんるん(run-run)![]() |
浮き立つような、楽しい気分である様子。 「病院からまっすぐ合コンの席へ。るんるん歓談しているうちに」(朝日新聞00・12・30) 「気分」を付して「いかにもルンルン気分といった感じで」(週刊現代00・12・30号)のようにも使う。 |
◆ 参 考 |
アニメの題名「花の子ルンルン」からと言われるが、草野心平にも用例があり「俺ハ砂利道ヲ、ペダルヲ踏ミ。ウレシイ。・・・砲弾雲マスマス ルンルン」(「仲間ノ家へ」)は夏の情景。 |
9-3) れろれろ(rero-rero)![]() |
ひどく酒に酔っていたり、緊張していたり、あるいは幼いために不慣れだったりして、言葉や態度が不明瞭である様子。 「いかにもレロレロの酒酔い状態」(朝日新聞94・01・25)、「僕は、指輪を口に放り込み、舌の裏に潜ませてから、カメラの前に飛び出した。台詞がレロレロしているように聞こえたとしたら」(朝日新聞夕刊02・09・25)。 なお、同じような意味で「ろれつが回らない」という表現もあるが、これは雅楽における音階名「呂律(りょりつ)」が不明瞭な様子からとされ、「れろれろ」とは無関係。 |
◆ 参 考 |
笛の音の形容として用いられた例もある。「横笛の声がれろれろ、ひーひやらりと面白く聞こえて」(田山花袋『重右衛門の最後』) 江戸時代、幼児をあやす様子を「れろれろ」と表すことがあったが、泣く子を黙らせるのに「遼来遼来(りょうらいりょうらい=怖い魏の武人の遼が来るぞ)」と脅しだのが訛って「れろれろ」となり、そこからきたという。 また、室町末期の『日葡辞書』には「れろれろ」に音の似た「ろりろり」という項があり、「恐怖などのためにおちつかないさま、またはうろたえているさま」という説明がなされている |
10.わんわん(wan-wan) |
① 犬の吠え声。 「わんわん」は、江戸時代から犬の吠え声を写す語として一般的になった。 「之(これ)から些(ちつ)と肝玉を練る修行に時々吠えてやるかナ。・・・此奴(こやつめ)め、ワンワンワン」(内田魯庵『社会百面相』) 江戸時代以前は、犬の吠え声は、「びよ」「びょう」と写していた。英語のbow‐wow(バウーワウ)に通じるバ行音であった。「(柿主)いぬなら鳴かうぞよ。(山伏)はあ、又こりゃ、鳴かざなるまい。びよびよ」(狂言『柿山伏』) |
② 人が激しく連続的に泣く声。江戸時代から例が見られる。 「月見草の中でワンワン泣いている、ありツたけな声を出して泣いている」(吉川英治『宮本武蔵』) |
③ 声や音が反響する様子。また、その音。 残響音があって聞き取りにくく、やや不快な場合に使う。「せまい室内にその声がワンワンひびき」(野坂昭如『エロ事師たち』) |
④ たくさんのものが一挙に押し寄せてくる様子。また、その音。蚊・蜂などの小さな羽音をたてる虫が群れをなして飛び立つときに使うことが多い。 「波止場の、金バエがわんわん飛ぶコンクリートの上を」(小松左京『日本沈没』) |
◇ 類義語「わん」「きやんきやん」「わ-わ-」 |
「わん」は、①②の類義語。「わんわん」が連続的な声であるのに対し、「わん」は瞬間的な声を表す。「きやんきやん」は、①の類義語。「わんわん」が中型以上の成犬の鳴き声であるのに対し、「きやんきやん」は子犬や小型犬の鳴き声を表す。「わーわー」は、②の類義語。「わんわん」は、泣き声が反響している感じがあるのに対し、「わーわー」は泣き声がそのまま広がっていく感じ。 |
◆ 参 考 |
中国でも犬の声は「ワンワン」。 |
いささか独断と偏見が過ぎました。聞いたことはあるけど、普段余り使わないものが多かったようです。ご参考としていただけるものは、少ないようでした。でも、この辞書を見ていると、様々な言葉もあるのだと感心します。
などというこの言葉を使った俳句も記載されていました。 齢を重ねて七〇になると、「古希」と言うようですが、今では「並居(ザラ)」です。しかし、退化は足からと言われます。「よたよた」「よぼよぼ」「よろよろ」の擬態語には、ご勘弁願いたいと思っていますが、如何なりますか。 話変って、会員の先生方へ たまには、「わいわい」言いながら、始め「ちょろちょろ」中「ぱっぱっ」終り「どんどん」、後は「れろれろ」で終電車。翌朝「へとへと」「むかむか」頭「がんがん」。 そして、いつもの決まり文句「あいつ等とは、もう飲まない。」などというのは如何でしょうか。 |
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今回はこの辺りで失礼を!!! |
註;
島崎 藤村 | 詩人・小説家。明治26年『文学界』の創刊に参加。同30年詩集『若菜集』刊行。同39年、小説『破戒』を出版し、自然主義文学の作家としての地位を確立。作品『新生』『夜明け前』など。(1872~1943) | 戻る |
夏目 漱石 | 英文学者・小説家。英語教師をへて、イギリスに留学。帰国後、『東京朝日新聞』の専属作家となり、同新聞に次々と作品を発表。森鴎外とともに近代日本文学の確立に貢献。作品『吾輩は猫である』『三四郎』など。(1867~1916) | 戻る |
志賀 直哉 | 小説家。明治43年、武者小路実篤らと雑誌『白樺』創刊。父との対立を描いた『大津順吉や』、和解を描いた『城之崎にて』『和解』などを執筆。昭和12年、長編小説『暗夜行路』を完成。作品『小僧の神様』『清兵衛と瓢箪』など。(1883~1971) | 戻る |
山本周五郎 | 小説家。新聞・雑誌記者をへて、『須磨寺付近』でデビュー。時代物を中心に、誠実に生きる庶民の側に立った物語を多く執筆。作品『青べか物語』『さぶ』など。(1903~67) | 戻る |
斎藤 隆介 | 児童文学作家。新聞・雑誌などの記者をへて創作活動に入り、昭和43年『べ口出しチョンマ』で小学館文学賞、同53年『天の赤馬』で児童文学協会賞受賞。作品『八郎』『花さき山』など。(1917~85) | 戻る |
田山 花袋 | 小説家。江見水陰に師事。明治39年、博文館発行の『文章世界』の主筆となる。翌40年『蒲団』を発表、私小説の出発点となる。作品『重右衛門の最後』『田舎教師』など。(1871~1930) | 戻る |
林 芙美子 | 小説家。昭和5年、自らの苦難の半生をつづった自伝的小説『放浪記』がベストセラーとなり、女流作家の道を歩む。作品はほかに『晩菊』『浮雲』など。(1903~51) | 戻る |
宮沢 賢治 | 詩人・童話作家。岩手県の花巻で、農業指導のかたわら詩や童話を創作。大正13年、詩集『春と修羅』と童話『注文の多い料理店』を自費出版。作品『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』など。(1896~1933) | 戻る |
三浦 哲郎 | 小説家。井伏鱒二に師事。昭和35年『忍ぶ川』で芥川賞受賞。血の系譜に悩み、それを克服して生きることをテーマとする。作品『白夜を旅する人々』『みのむし』など。(1931~) | 戻る |
堀川波鼓 (ほりかわ なみのつつみ) |
江戸時代の浄瑠璃。近松門左衛門作。宝永四(1707)年頃初演。 | 戻る |
為忠集 (ためさだしゅう) |
室町時代の私家集。この集は「為忠」なる人物をめぐって、平安時代成立説、鎌倉時代末成立の説があったが、その表現等から室町時代の歌人の私家集であるということが最近わかった。 | 戻る |
泉 鏡花 | 小説家。能楽と江戸文学に造詣が深く、幻想性に富む独自の作品を創作。反自然主義作家としての評価も高い。作品『高野聖』『婦系図』など。(1873~1939) | 戻る |
江戸川乱歩 | 小説家。大正12年、雑誌『新青年』に「二銭銅貨」を発表。以降、本格推理小説を次々に発表し、日本の探偵小説の基礎を確立。作品『屋根裏の散歩者』『怪人二十面相』など。(1894~1965) | 戻る |
源氏物語 | 平安時代の物語。紫式部作。現存の物語は「桐壺」以下「夢浮橋」までの五四帖から成る。美貌の貴公子・光源氏が、多くの女性と関わりながら到達した栄華と、その晩年の苫悩、さらに光源氏亡き後、次世代の物語を描いた長編。「橋姫」以下の最後の十帖は特に、「宇治十帖」と呼ばれる。物語文学の最高峰とされ、後世の文学に与えた影響は多大である。十一世紀初頭成立。 | 戻る |
有島 武郎 | 小説家。内村鑑三の影響を受け、キリスト教に入信。アメリカ留学後、明治43年、雑誌『白樺』の創刊に参加。作品『カインの末裔』『或る女』など。(1878~1923) | 戻る |
長塚 節 | 歌人・小説家。正岡子規に師事。明治36年、伊藤左千夫らと『馬酔木』創刊。同43年『東京朝日新聞」に小説「土」を連載。作品は歌集『病中雑詠』『鍼の如く』など。(1875~1915) | 戻る |
史記抄 | 室町時代の抄物。桃源瑞仙(とうげん ずいせん)著。前漢の司馬遷が著した『史記』についての注解。質・量共に当代の口語資料として貴重。文明九(1477)年成立。 | 戻る |
井上 靖 | 小説家・詩人。大阪毎日新聞入社後、昭和24年『闘牛』で芥川賞受賞。作品『氷壁』『天平の蔓』など。昭和51年文化勲章受章。(1907~91) | 戻る |
大江健三郎 | 小説家。昭和33年、『飼育』で芥川賞受賞。以降、独特の晦渋な文体で多くの作品を発表。作品『われらの時代』『万延元年のフットボール』など。平成6年、ノーベル文学賞受賞。(1935~) | 戻る |
梶井基次郎 | 小説家。大正14年、学友らと雑誌『青空』創刊。「檸檬」「城のある町にて」などを発表。鋭い感受性の詩的作品が多い。作品『冬の日』『交尾』など(1901~32) | 戻る |
森 鴎外 | 小説家。劇作家・評論家。陸軍軍医のかたわら、多彩な文学活動を展開。夏目漱石と並ぶ、明治を代表する作家の一人。作品『舞姫』『雁』など(1863~1922) | 戻る |
太宰 治 | 小説家。井伏鱒二に師事。昭和10年に『逆行』芥川賞候補になるなど、戦前から作家として知られる。戦後、坂口安吾などとともに無頼派と呼ばれ、『斜陽』『桜桃』などで流行作家となる。作品『ヴィヨンの妻』『津軽』など多数。(1909~48) | 戻る |
小酒井不木 | 医学者・小説家。病気で東北帝大教授を辞職後、翻訳および探偵小説を執筆。作品『人工心臓』『疑問の黒枠』など。(1890~1929) |
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佐渡 裕 | 指揮者。小沢征爾に見いだされ、レナード・バーンスタインに師事。平成2年プロ・デビューし、多彩な活動を展開中。著作『僕はいかにして指揮者になったのか』など。(1961~) | 戻る |
和英語林集成 | 江戸時代末期の日英辞書。ヘボン著。慶応3(1867)年に初版が刊行された。その後、増補改訂を行いながら、再版が明治5(1872)年に、三版が明治19(1886)年に刊行された。三版は「改正増補和英語林集成」と呼ばれる。 | 戻る |
石坂洋次郎 | 小説家。戦前の教職時代に『若い人』を発表。昭和22年、新聞小説『青い山脈』で新しい時代の到来を描き、国民的人気を得る。作品『美しい暦』『陽のあたる坂道』など。(1900~86) | 戻る |
福永 武彦 | 小説家・仏文学者。昭和27年の『風土』、29年の『草の花』で文壇的地位を確立。ほかに加田伶太郎、船田学の名でそれぞれ推理小説とSFを執筆。作品『死の島』『海市』など。(1918~79) | 戻る |
芥川龍之介 | 小説家。在学中に『新思潮』に発表した「鼻」が夏目漱石に認められ、文壇にデビュー。才気あふれる理知的な文体で多くの作品を執筆。作品『羅生門』『河童』など。(1892~1927) | 戻る |
永井 荷風 | 小説家。広津柳浪に師事。滞米、渡仏の後『あめりか物語』を発表。『三田文学』の創刊をへて小説を執筆、『墨泉綺譚』など多くの作品を発表する。作品はほかに『腕くらべ』『断腸亭日乗』(日記)など。昭和27年、文化勲章受章。(1879~1955) | 戻る |
幸田 文 | 小説家・随筆家。幸田露伴の次女。昭和22年、露伴の臨終を描いた『終焉』で注目される。歯切れのよい端正な文体で知られる。作品『流れる』『おとうと』など。(1904~90) | 戻る |
北 杜夫 | 小説家。斎藤茂吉の次男。昭和35年、『夜と霧の隅で』で芥川賞受賞。どくとるマンボウの名でユーモアに富むエッセイも多い。作品『どくとるマンボウ航海記』『楡家の人びと』など。(1927~) | 戻る |
菊池 寛 | 小説家・劇作家。大正5年、芥川龍之介、久米正雄らと第四次『新思潮』を創刊。『忠直卿行状記』など、簡潔な表現のテーマ小説によって作家としての地位を確立。作品『父帰る』『恩讐の彼方に』など。(1888~1948) | 戻る |
軽口笑布袋 (かるくち わらいのほてい) |
江戸時代の咄本。似嘯(じしょう)著。延享四(1747)年刊。 | 戻る |
諺臍の宿替 (ことわざへその やどかえ) |
江戸時代の咄本。一荷堂半水著。天保年間(1830~44)刊。 | 戻る |
松本 清張 | 小説家。昭和27年『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。同32年、雑誌『旅』に連載した「点と線」で社会派推理小説の分野を開拓。以降、歴史・ノンフィクション分野でも活躍。作品『砂の器』『昭和史発掘』など。(1909~92) | 戻る |
瀬尾 七重 | 児童文学作家。福田清人に師事。昭和43年『ロザンドの木馬』で野間児童文芸推奨作品賞受賞。『かんどういむ』同人。作品『ポカホンタス』『迷路の森の盗賊』など。(1942~) | 戻る |
伊藤左千夫 | 歌人・小説家。『アララギ』を主宰し、斎藤茂吉、長塚節ら多くの門下生を育てる。作品『野菊の墓』『分家』など。(1864~1913) | 戻る |
夢野 久作 | 小説家。奔放な空想力を駆使して幻想的世界を描き出す。作品『瓶詰地獄』『ドグラ・マグラ』など。(1889~1936) | 戻る |
りんりん虫 | 静岡県では、鈴虫のことを、こう呼ぶ。 | 戻る |
草野 心平 | 詩人。昭和3年、最初の詩集『第百階級』を刊行。同10年、高橋新古、中原中也らと『歴程』創刊。戦後も生命の賛美をテーマとした旺盛な創作活動を展開。作品『マンモスの牙』『絲綱之路』など。昭和60年、文化勲章受章。(1903~88) | 戻る |
日葡辞書 | 十七世紀初頭の、ポルトガル語で説明した日本語辞書。イエズス会の宣教師によって成る。室町末期の口語を中心に方言、文書語、歌語、女性語などご二万余語を収録。慶長八~九年(1603~04)刊。 | 戻る |
内田 魯庵 | 評論家・翻訳家・小説家。『女学雑誌』に評論を連載。また社会小説『くれの廿八日』などを執筆。作品『罪と罰』(翻訳)、『思ひ出す人々』など。(1868~1929) | 戻る |
柿山伏 | 室町時代の狂言。柿を盗む山伏を持ち主が見つけ「あれは猿だ」「鳶だ」とからかい、山伏はそのまねをする。 | 戻る |
吉川 英治 | 小説家。大正3年、『剣難女難』『鳴門秘帖』で流行作家となり、昭和10年から『東京朝日新聞』に連載の「宮本武蔵」で時代小説に新境地を開く。作品『秋本太平記』『新書太閤記』など。昭和35年、文化勲章受章。(1892~1962) | 戻る |
野坂 昭如 | 小説家。CMソングの作詞、コントの制作などで活躍。昭和38年『エロ事師たち』でデビュー。同43年『アメリカひじき』『火垂るの墓』で直木質受賞。戦時体験から焼跡闇市派を自称。作品はほかに『骨餓身峠死人葛』など。(1930~) | 戻る |
小松 左京 | SF作家。漫才の台本作家などをへて、昭和37年『地には平和を』でデビュー。同48年『日本沈没』が大ベストセラーとなり、日本推理作家協会賞受賞。作品『日本アパッチ族』『復活の日』など。(1931~) | 戻る |
参考図書
暮しのことば 擬音・擬態語辞典 | 山口 仲美=編 | 講談社 |