主題;ドイツの歴史
シラー(Friedrich von Schiller) について:
1.まえがき: |
|
ドイツ国内の(一部オランダ/ベルギー含む)都市間を結ぶ高速鉄道ICE(Inter
City Express)には愛称がついていて25年前乗った列車に「Schiller」の名前が付けられていたのを列車内時刻表を目にし、馬齢30半ばにしてその時初めてシラーの名を知った。 |
|
2.歓喜の歌: |
|
年末になると各地では、ベートーベンの交響曲第9番・第4楽章 (合唱付)を演奏するのが恒例となっているが、合唱の詩は1785年シラー26歳の時に作られたものである。 1824年にはベートーベンによって曲がつけられた。また詩が作られてから200年後の1985年にはEU(欧州連合)の歌として承認されたのである。 |
|
3.生い立ち: |
|
シラーは1759年ヴュテンブルグ公国のネッカー川沿いの町マールバッハ(Marbach)で生まれた。Marbachはシュトットガルトの北20km川を下ったところで、さらに下ればハイデルベルグからマンハイムでライン川に合流する。 シラーの父は職業軍人で、貴族ではなかった。シラーは幼少の頃からラテン語を学進んだ。神学校へ進んで聖職者になりたかったが領主の命令で軍人や官吏を養成する学校へ進学させられ法学・哲学を学ぶも、1780年21歳で医学科を卒業し軍医となった。 学生の頃から書き始めていた「群盗」を1781年に出版、翌年プアルツ選帝侯領マンハイムの劇場にて上演され大評判を得る。この時シラーは秘密観劇し、後に無断国外旅行で禁固刑に処された。 1784年25歳の時ダルムシュタットの宮廷にて、「Don Carlos」を朗読し、ヴァイマール公からヴァイマール顧問官の称号を受ける。 1785年ザクセン選帝侯国のライプチッヒに移住したがその後、首都ドレスデンへ移り「歓喜の歌」を作る。 |
|
4.ゲーテとの交流: |
|
シラーは1787年28歳の時ヴァイマール公国に移り1805年45歳で死ぬまでこの国に住んだ。ヴァイマールへ移って直ぐ、シラーは友人の紹介でヴァイマールの隣シュヴァルツブルグ公爵領のルードルシュタット(Rudolstadt)を訪れ、カロリーネ&シャルロッテ・フォン・レンゲフェルト姉妹と親しくなった。 翌88年レンゲフェルト(Laengefeld)家にてゲーテに初めて会う。 シラーは2週間後にゲーテ「エグモント」の批評をイエナ(Jena)の一般文学新聞に発表する。 「エグモント」の影響からか「オランダ離反史」を書く。ゲーテの推挙もありシラーはイエナ大学歴史学客員教授になるのであるが、当初無給であった。 ちなみにゲーテの「エグモント」はベートーベンにより曲が付けられ、1810年「エグモント序曲」としてベートーベン自身の指揮によりウィーンにて演奏された。 1790年妹のシャルロッテと結婚するが、ヴァイマール宮中顧問官の給料では足りず、シャルロッテの母の援助を受けていた。 10歳年上であったゲーテは、シラーへの助言と指導を行い、ゲーテも自作の批評をシラーに求めていた。途中になっていた「ファウスト」はシラーが熱心に勧めたため、ゲーテも執筆を再開し完成したのである。 1802年、妻シャルロッテの姉によりヴァイマール宮廷からの働きかけでウィーンの神聖ローマ皇帝により貴族に列せられた。それから3年後の1805年肺炎により死去、享年45。 シラーの死を聞いた時、ゲーテは嘆き悲しみ自身の存在の半分を失ったと述べた。機会あるたびシラーを褒め称えたのでその名声は一段と上がった。 |
|
5.ヴィルヘルム・テル: |
|
シラーが死ぬ前年1804年に完成した。もとはゲーテが叙事詩としてまとめようとしていた題材で、ゲーテがスイスを旅行した時に得た「テル」の話し、スイスの風景など全てをシラーに提供したとのことである。 ヴィルヘルム・テルについては本誌#48「スイスの独立」で触れたが、シラーの本の中で「スイス3州の人々はかって、自分達の祖先は北の奥地に住んでいたが、飢餓により10人に1人の割合で籤に当たったものが祖国を捨て集団にてドイツを通りこの森林の高地へやって来た」とある。 「Tell」はアルトドルフ(Altdorf)で代官ゲスラーに言われてリンゴを射るが、Uri州Altdorfには「弓を持ったTellとその側に息子Walterの像」が立っている。 |
|
6.あとがき: |
|
シラーは、ゲーテとともにヴァイマール公廟に祭られている。 それにしても高速鉄道の列車名にRheinpfeilはぴったりするが、Schillerがしっくり来ないのは走っている区間を忘れたせいかもしれない。名づけたそれなりの理由があるのだろう! |
参考図書
シラー | 清水書院 Century Books |
ヴィルヘルム・テル | 岩波文庫 |
天才たちの私生活 | 文春文庫 |