主題;「太陽系の神々」について

 

今回は、最近の話題からです。
と言って、何ほどのことも、目新しいものはありません。

 
 アメリカ航空宇宙局(NASA)は今年の3月2日、火星探査車オポチュニティーの着陸地地点に、かつて大量の水が液体の状態で存在していたと発表しました。 周辺の岩石の構造や化学的な特性から結論づけたのです。
上;  「エル・カピタン」と命名された火星の岩石。火星がかって水に浸かっていたことを示す特徴が見られるという。
下;  厚さ1cm ほどの薄い岩石が30~45cm積み重なった場所。ここを詳しく調べた。
いずれもNASA提供。
本図は、朝日新聞 夕刊 2004/03/03より採取。
 
 

 昨年の火星大接近に合わせ、欧米が火星探査機を打上げたのは、水と生命の痕跡を探すことが最大の目的でした。
 今年の1月に着陸したNASAの二機の探査車は、赤外線やX線を使い、土壌の鉱物や岩石の組成を調べてきました。その結果、周囲に水のある場所で生成されやすい炭酸塩や赤鉄鉱などを見つけました。しかし、炭酸塩は空気中の水蒸気の効果でできたとの見方もあり、赤鉄鉱は火山活動でも生成されるため、決定的な証拠とはなっていませんでした。

 これに対し、硫酸塩鉱物は大量の水がないと生成されません。更に岩石の表面で見つかった球状の物質も水の作用を示すものとしての決め手になりました。

 大量の水が存在したとすれば、今後の関心は生命の存在に移ります。

果たして、「火星には生物が存在しているか、存在していたか」。今後の成果が待たれます。 

 
 

 ところで、火星を含む太陽系の惑星は、太陽を中心として九つの惑星があります。その順序は『スイキンチカモクドテンカイメイ』。
 小学生の頃覚えたものです。しかし、九つの惑星といっても、古来知られていたのは、地球以外では、肉眼でも見える水星、金星、火星、木星、土星の五つでした。そして、他の三つは近代になって見つけられたものですが、これらには神話の神がなぞられています。それ故、太陽系の神々です。

 
1.水星  この星は素早く動くので、ギリシャ神話では伝令の神ヘルメスと、ローマ神話でも通商や旅行の神のメルクリウス(水星マーキュリーの語源)とされています。
 惑星記号は、男性記号の上に二本の角が生えたような形をしていますが、これはヘルメスの持つ二匹の蛇が絡み合った杖を象っていいます。
2.金星  この星は明るく美しいことから美の女神が当てられ、ギリシャ神話ではアフロディテになり、ローマ神話ではウェネス、即ちビーナスになる。
 惑星記号は、○の下に十字を描いた、いわゆる女性の記号です。 
3.火星  この星は赤く血や戦争を連想するので、ギリシャ神話では軍神アレス、ローマ神話ではやはり軍神マルス(火星マーズの語源)とされています。
 惑星記号は、○に矢印の付いた、いわゆる男性記号で、マルスの持つ盾と槍を象ったものと言われています。
4.木星  太陽系最大の惑星であるこの星は堂々としていることから最高神が当てられ、ギリシャ神話ではオリンポス神族の最高神である大神ゼウスが、ローマ神話ではユピテルが対応しています 惑星記号は、数字の4の様な形をしているがゼウスが放った雷を図案化したものと言われています。
5.土星  この星は、あまり動かないので大地を連想させ、ギリシャ神話ではコロノスが、ローマ神話では農耕の神サトゥルヌスが当てられています。
 惑星記号は、変形した「h」に横棒がついたような形は、農耕の神サトゥルヌスの鎌に由来すると言われています。
6.天王星  1781年、イギリスのウィリアム・ハーシェルによって発見されました。当初、ハーシェルは、当時の国王ジョージⅢ世にちなんでジョージ星と命名しましたが、国際的には受け入れられませんでした。その後、ボーデが提唱して、ギリシャ神話での天の神ウラノスに、ローマ神話でもウラノスに対応させました。「天王星」は、その直訳です。
 大文字の「H」と○を組合わせた惑星記号は、ハーシェルの頭文字を図案化したものです。
7.海王星  この星は、天王星の軌道の乱れから、フランスのアーヴァイン・ルベリエ、ベルリン天文台のヨハン・ガレ、イギリスのジョン・アダムスらによって1846年に発見されました。ギリシャ神話ではゼウスの兄弟にあたる海神ポセイドンに、ローマ神話ではネプチューン対応しています。「海王星」は、その直訳となります。
 ポセイドンは、ギリシャ文字のΨ(プサイ)の形をした三叉の鉾(ほこ)--トライデント--を持っていますが、その形がそのまま、この星の惑星記号となっています。
8.冥王星  この星は、アメリカ・アリゾナ州ローウェル天文台のクライド・トンボーが、1930年に発見したものです。発見当初は、クロノス、ミネルヴァ、タンタロスなどの名前の候補がありましたが、最終的にプルートとなりました。ギリシャ神話では冥界の王ハデスに、ローマ神話ではプルトンに対応させられています。
 和名の天王星、海王星は中国で作られた訳ですが、「冥王星」は、日本の野尻抱影(ほうえい、英文学や星の和名の研究家、大佛次郎の兄)が作った言葉だと言うことです。
 惑星記号は、プルートの綴りの一部でもあり、パーシバル・ローウェル(アメリカの天文学者)の頭文字でもあります。 
 注;2018/08/09
 冥王星は、2006年までは太陽系第9惑星とされていたが、現在は、太陽系外縁天体内のサブグループ冥王星型天体の代表例とされる、準惑星に区分される天体となっている。
 
 さて、ここに火星を含む太陽系の神々をある模型(縮尺したもの)で現した「表」があります。
 ここでは、太陽の直径を92cm  のビーチボールとしています。ですから、92cm=1.4×106 km となります。
 
天 体 直径

(km)
太陽からの
距離
地球=1
  模型での
大きさの程度
模型での
直径
(mm)
模型での太陽
からの距離
(m)
水 星 4,864 0.3871   リンゴの種 3.2 37.8
金 星 12,100 0.7233   エンドウ豆 7.9 70.8
地 球 12,756 1.0000   エンドウ豆 8.3 97.9
火 星 6,788 1.5237   ベアリングの玉 4.5 149.1
小惑星 < 1,000 2.8   大粒の砂 0.7 274.5
土 星 137,400 5.2026   ソフトボール 89.7 409.7
木 星 115,100 9.5549   ソフトボール 75.2 931.5
天王星 50,000 19.2184   ピンポン球 32.8 1882.2
海王星 49,400 30.1104   ピンポン球 32.3 2,950.9
冥王星 < 100 39.5399   3,862.5
             
最も近い
恒星
  4.3光年   ビーチボール 920.0 26,282,000.0

 

 模型に置換えた数字にすると、感覚的に分るような気がします。

 地球から火星までの距離を見てみます。51.2mです。今回、火星に水があった証拠を見つけたとNASAは言いました。考えてみれば凄いことです。
 ゴルフ・リンクに置換えてみれば、ピンから約55ヤードのピッチショットをして、チップインさせ、そこの地質を分析して、そこらか写真とデータを送ってきたのです。数ナノ(正確に換算していません)の埃を51.2m先の大きさ4.5mmのベアリングの玉(それも指定したところに)、当てるのですから驚きます。

 人間の獲得した叡智に感心するばかりです。


 朝日新聞 朝刊の3月6日(土)付 「かたえくぼ」欄からの転記です。 
 
 『火星に水の証拠』
  今度は自信あり    ---米国
(坂戸  ひで)

 ここにも、人の持つ知恵を生かしたものがあります。

 「イラクに平和と安定が得られる様に」と願って、攻撃を仕掛けてから早くも一年が経過します。その間、当地の混乱は収まるようには思われません。
 混乱は地球の各地に飛火し、広まる勢いすら感じさせます。

 人類が築いてきた叡智を生かして、解決策を見いだしたいものです。
今回は、この辺りで失礼を !!!!!!!!

参考図書、資料

宇宙・天文大辞典   丸善(株)
<見えない宇宙>の歩き方 福江 純 PHP新書
朝日新聞 3月3日夕刊、3月6日朝刊   朝日新聞社