主題;ドイツの歴史

 ビール純粋令(Reinheitsgebot)について:

1.前書き

   

 中国のビール消費量がドイツを越えて世界一になった、との報道があったのはたしか昨年だったような気がする。
 中国では「青島ビール」が有名であるが、これは山東省「青島」がかってドイツの植民地であった時のなごりである。
 この「青島ビール」を遼寧省「遼河」河口の町「営口」で飲んだことがある。


2.ビールの歴史:

   メソポタミアでは、紀元前4000年頃からシュメール人が農業を始めていて、当時の粘土板にビールの記述がある。

 発芽させた麦を乾燥させ臼で挽いた粉に水を加えてこねパンを焼く。パンを砕き湯を加え、自然の酵母で発酵させた。
 「ハンムラビ法典」にはビールに関する条項が4条も書かれているとのことである。

 エジプトでは、ビールの作り方がピラミッドの壁画に残っている。シュメール人の作り方と同様だが、麦芽から作ったパン生地を寝かせ、パン生地がふくらんだ後に焼いた。パンを砕き湯を加えて自然発酵させ是に薬草・香草などを加えていた。この薬草が現在のHop(Hopfen)になっていった。

 ビールは、キリスト教とともにヨーロッパへ広まっていくが、ビールの醸造所は修道院が担った様である。
 ボーデン湖の南側のスイス ザンクト・ガレン(St.Gallen)修道院(720年創建)は一番古い修道院醸造所と言われている。

 ビールに加えた薬草・香草には種々の植物(チョウジ・ニッケイ・アニス・ハッカ etc.)があった。

 北ドイツのハンブルグでは14世紀頃ホップの苦味・香り・防腐効果に注目し、ビール製造で繁栄した。「Holsten」「Beck」などは北ドイツを代表する銘柄でハンブルグ駐在時にはこれらをよく飲んでいた。

3.ビール純粋令:

   ドイツでは、ビールには「大麦・ホップ・水以外のものを混ぜてはいけない」という法律がある。
 ビールといえば、南ドイツのミュンヘン(Muenchen)が有名であるが、15世紀後半にMuenchenでは、従来の上面発酵に代わって下面発酵の醸造方法が行われるようになった。
 下面発酵は低温醸造なので雑菌の影響が少なく、すっきりした味になる。

 1516年、バイエルン公ヴィルヘルム4世・ルートヴィッヒ10世兄弟によって「ビール純粋令」が公布された。この時酵母の存在が未確認であったため酵母は抜けている。瓶・缶ビールには
「Gebrau nach dem Bayerischen Reineitsgebot von 1516」
「1516年バイエルンビール純粋令による醸造」 と書かれている。

 日本では通常のビールには米やコンスターチ(とうもろこし粉)とアルコール(?)が入れてある。
但し、サッポロ「エビス」、サントリー「モルツ」、他キリン、アサヒにもビール純粋令に適合したビール<を作っているとのこと。

オランダ・ベルギーにも旨いビールがあるが、「ビール純粋令」に適合していないことでドイツに輸出出来ないことは「保護貿易」にあたると訴えられドイツは敗訴した。
 ドイツへの輸出は認め<られたが、「ビール純粋令」なる法律が廃止されたか否かは不明である。

 裁判とは関係なくドイツ人は「ビール純粋令」に適合したビールしか飲まないのではないかと思われる。

4.アルトビアー:

 ハンブルグに2年住んだ後、ライン河畔デユセルドルフ郊外に2年住んでいたが、デユセルドルフではいつもアルトビアーを飲んでいた。
ビールを注文すると「アルトかピルスか」と聞かれる。アルトビアーはまろやかで軽く飲みやすいビールである。

 ピルスは、チェコのピルゼン(Pilzsen)で作られた方式ということで、一般的な日本のビールと同様淡い色である。アルトはもう少し色が濃く、苦味が少ない。

 現在では発芽させた大麦を釜で煎り、粉にして水を加え発酵させるのだが、この煎り方が強い程出来たビールは色が濃くなり苦味も少なくなる。ギネスはその最右翼かもしれない。

 冷えたシュタインヘーガーを「クッ」とあおり、のどから胃までが熱くなったところでアルトビアーを飲んだ時の感覚は忘れられない。

5.あとがき:

 ビールには上面発酵/下面発酵、色では淡色/中等/濃色、その他アルコール濃度などで様々な種類の銘柄があり、酵母や雑菌を取り除くための低温殺菌法やミクロフィルターの開発などいろんな工夫がほどこされている。
 蘊蓄(うんちく)を語るには、ワインほどではないにしても一筋縄でいかないものがある。

 軽い運動の後、ビールをオレンジジュースで割ったものを試して見てください。ドイツではアルスターバッサーと言う立派な飲み物です。

 中国で飲んだ「青島」ビールはビール工場が古いせいか不純物が取り切れていない感じがした。
 インドネシア・シンガポール・マレーシアでは冷蔵庫の設備が無いため、デンマークのカールス・バーグに氷を入れて飲む。ビールのアルコール濃度が16%もあるのには驚いた。
 アメリカへは6度行っているのだが、旨いビールを飲んだ記憶がない。「バドワイザー」や「ミラー」は軽いと言うより麦芽汁に近い。
 

 我が町に「St.Gallen」と名がつく小さなビアー・バーが出現しました。まだ行っていません。
 遠路はるばるではありますが、同行希望の諸氏はメールにて当方あてお申し出下さい。


参考図書、資料

ビールへの旅 郁文堂
わが酒の賛歌 徳間書店