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共筒の作り方

 筒は茶杓の入れ物ですが、その表(おもて)に“銘”などを書付ることによって、茶杓に命を吹き込んでいるものです。さらに、茶杓の作者が作った筒を、特に「共筒(ともづつ)」と呼びます。
 以下に、筒(共筒)の作り方の手順を記します。

目 次

筒 材

 

1)

切出し

 

2)

詰蓋面の加工

     

詰 蓋

 

1)

準備作業

 

2)

“のみ込み部”の切出し

 

3)

“のみ込み部”の仕上げ

     

仕上げ

 

1)

粗仕上げ

 

2)

本仕上げ

     

書付、そして完成

     

1 筒 材

 

1)切出し

     仕上がり時の筒の長さは、「200~205㍉」とします。
 基本的には、順樋側に切出します。つまり、竹の穂先側を下(底)にします。
 ただし、これはあくまでも原則(基本)で、素材の景色や作者の作為により逆樋側とすることも多くあります。
     筒の底とする部分から寸法を測って、筒を切るところにエンピツで印(シルシ)を付けます。
     その位置に線付けの紙(専用品)を巻きつけて、筒材の全周にエンピツで線を引きます。
この線は、詰蓋(詰栓、あるいは単に栓、または蓋ともいう)と接する部分となるので、作業は集中して行うことが大切です。

 この線の引き方(描き方)は筒の仕上がりに影響を与えます。
     竹を線に沿って“鋸”で切断します。

 この作業も集中して行うことが大切です。

 上記③の作業で正しい線が引けても、線と違うところで切断すると満足する結果はなりません。
 この様な場合、そのまま仕上げても満足のする筒になることはないでしょう。線を引き直し再加工する(その分だけ筒が短くなる)や、ヤスリ等で削り修正する、と言ったことで修正・挽回することは出来ますが、多くは“時間のムダ”となってしまうことの方が多い様です。
     切口部を仕上げます。

 平らな面においた布ヤスリ(#40~60)に押し当て丁寧に磨き(削り)ます。“鋸目”を完全に無くします。またこのとき、均一に磨く(削る)ことが大切です。
 仕上がったら、水平面に立てて切り口部の水平面に全周が密着することを確認します。また、筒が垂直に立っていることも確認します。
  ② 寸法を測る ③ 線を引く ④ 切断する ⑤ 切口部を仕上げる
 


 

2)詰蓋面の加工

     筒の仕上がった状態を想像し、書付をする面(以下、正面と言います)の中心を決めます。そして、仕上げた切口部にその中心の位置に印(シルシ)を付けます。
     切口部に“紙”(以下、当紙と言います)をあて、指でこすって切口部の形状を写し取ります。
 すると、当紙には2本の筋(切口の内と外)が付くことになります。この筋が奇麗に付くようにすることが大切です。
     当紙に付いた筋(2本)をエンピツでなぞり、線を描きます。
 描く線は筋の上を正確になぞるようにします。特に内側はきれいに描くことが大切です。
 また、筒の正面を示すために付けた印(シルシ)は、正確に写しておきます。
     当紙に描いた線(2本)の外側の線に沿って、ハサミで切り抜きます。


2 詰 蓋

 

1)準備作業

     材料を準備します。
     材料の景色を見極め、筒に入れる側(のみ込み側)を決めます。
     のみ込み側の切断面を布ヤスリ(#80~100)に押し当て削ります(研磨(磨く)します)。
 注〕外側になる面(反対面)は、後の作業で加工するので、この時点で行う必要はありません。
     削り・研磨が終わったら(その程度は自らの好みです)、木目(柾目)をみて、正面にする側を決めます。そして、その中心の位置に印(シルシ)を付けます。

 一般的には、木目が正面に対し平行(横)になるようにします。
    ⑤   のみ込み部を作るための線(ケガキ線)を素材の側面に引きます。
 “竿筋毛引”を使います。

 その寸法は、磨いた面から「10.0~12.0㍉」 とします。つまり、詰蓋が筒に入り込む寸法(のみ込み部)が、この値になります。
 引いた線(ケガキ線)は、素材の各稜で確実に一致させることが必須です。
 この作業は、筒の出来栄えに影響します。
     素材の磨いた面に当紙(上記2-4)で作ったもの)を“ノリ”で貼り付けます。“ノリ”は、固形のものを使います。澱粉糊はその水分で当紙が伸びるので不適当です。

 このとき、詰蓋の正面とするために付けた印(シルシ)と一致させます。また、当紙は素材からはみ出さないようにします。 
     当紙の糊が乾いたことを確認します。
     次に、当紙の内側の線(切口の内を示す線)に接して材料の側面に定規を使って平行な線を描きます。4本描くことになります。
 更に、これと45度に交わる線も描きます。これも4本で、計8本の線を描くことになります。

 『「詰蓋」作りの補助図』を参考にしてください。
     この線(8本)が、それぞれ素材の側面の“稜(エッジ)”に達したところから詰蓋の外側(上側)に向かって直線を描きます。
 この線は上記1.-5)で付けた線(ケガキ線)を越えるまで描きます。

 

   2)“のみ込み部”の切出し ⇒ この作業が『筒作りの要所』です。(見本参照)

     素材の“のみ込み部”ではない側を万力(バイス)にしっかりと固定します。
     素材の側面に描かれた線(ケガキ線)に沿って“鋸”で切込みます。このとき、加工している面と直角な面に描いた線(ケガキ線)に沿って切込むことが大切です。また、このときの切り込み深さは、上記1.-9)で描いた線までとします。
     更に、万力(バイス)に固定した状態のまま、手前側の45度の線についても切り込みを入れます。この切り込み深さも上記と同様とします。
     この作業を素材の側面(4面)の全てに行います。
     ここでの作業は、“鋸”を線(ケガキ線)に沿って切込むことが重要です。

 また、“鋸”を力を入れて動かすことはありません。仕事(切込み、切断すること)は“鋸”に任せ、手はその手助け、補助をする、と言った気持ちです。
     次に、素材の“のみ込み部”の面を上にして万力(バイス)に、固定し直します。
     上記1.-8)で描いた線に沿って、“鋸”で切り込みます。
 切り込む毎に素材の不要となる部分が切落されることになります。この作業を全ての線(8本)について行います。
 
 ここで大切なことは、“鋸”で切っていく際に、素材の側面の線(ケガキ線)まで入れない様に注することです。不用意に“鋸”を入れると筒と接する部分に“キズ”が付き、これまでの作業が無駄になってしまいます。

 全ての線(8本)に沿って切り落とすと、素材は詰蓋の原型を現すことになります。

 ここまで出来れば、筒作りの90%以上は済んだといえます。
  1)⑨の作業が完了 2)⑦の作業が完了 3)④の作業が完了 3)⑤の作業が完了
 

 

  3)“のみ込み部”の仕上げ

     これからの作業には、“デザインナイフ”を用います。(切れ味のよいものを使って下さい。)
     上記2.で得られた(作った)詰蓋の原型を、当紙のある面を上から見ると、“のみ込み部”が8角形になっている筈です。この各稜を切り落とします。その切り落とす量の目安は、当紙に残っている筒の内径を示す線までとします。
 
     この作業を繰り返して行い、“のみ込み部”が丸くなるよう(筒の内径の形状が目安)に削ります。但し、仕上げる必要はありません。
     次に、“のみ込み部”の先端部分をその全周にわたって「1~1,5㍉」程度の面取り加工をします。

 この面取りした面は、そのまま残ることになるので、きれいになる様に作業します。
     この先端部を筒の接合面に当ててみます。このとき、わずかに力をかけて筒の内径(内部)の稜(エッジ)によって、面取りした面に“当たり線”が出る様にします。
 ですが、先端部を筒に押し込むことは厳禁です。ここで無理すると、筒に割れが生ずることになります。
 また、このとき、筒と詰蓋の正面とする印(シルシ)は合わせることも重要です。
     この“当たり線”から筒との接合面に向って垂直に削り落としていきます。
 但し、切り落とす量は、少しづつ行います。この作業を繰り返して、詰蓋の“のみ込み部”が次第に筒に入っていくようにします。

 ここで削り過ぎると筒との合わせがゆるくなりますので、注意が必要です。また、このとき正面とする“印(シルシ)”は、常の合わせる様にします。

 この作業に焦りは禁物です。チョッと無理に押し込んだため、筒に割れが入って、これまでの作業が全て!!!・・・・!!!なんて、にならない様、注意しましょう。
     “のみ込み部”が筒に入る様になり、残り「2~3㍉」程度になったら、切り落としている部分と筒の接合面とが90度となるように仕上げます。ここで上記2-7)の作業の“鋸”による切込みが不足していることがありますので、これを補いながら慎重に行うことが大切です。
     ここまで出来たら、筒の接合面に当たるまで詰蓋を入れてみます。
       
       筒と詰蓋とが全周にわたってピッタリと接していたら、“やったー”です。
 一方、もしかして、ピッタリと接していない。このときは挽回策を考えましょう。
       


     

仕上げ

 

1)

粗仕上げ

 

2)

本仕上げ

     

書付、そして完成