>

茶杓と筒の作り方(2/3)

茶杓の製作/準備編

目 次

 
 

1

製作の準備

 

2

竹の準備

 

3

素材寸法の決定


製作の準備

  1) 素材の選択
     茶杓の多くは竹で作られています。竹以外には梅、桜、南天などで作られたものもありますが、多くは竹の素材となります。
 竹には多くの種類がありますが、茶杓に使用されるものは、マダケ、ハチク、シボチク、ウンモンチク、胡麻竹(ゴマダケ)、実竹(ジッチク)、煤竹(ススダケ)などです。
 以下、それぞれの竹について記すます。
  2) 竹の種類
    白 竹:シロタケ
       マダケ、ハチクを12月に切り出し、油抜きしたものを「白竹」といっている。茶杓材として数多く作られているものである。
    実 竹:ジッチク
       マダケの地下茎が地中で障害物に当り、地上に伸びて竹となったものである。利休以来名杓として現存するものに、この実竹を用いたものが多い。
    胡麻竹:ゴマダケ
       マダケ、ハチクなど生えたまま枝を全部切り落とし(5月頃行う)半立枯れ状態にして約6か月過ぎると、桿にゴマ状の斑点が発生する。
    絞 竹:シボチク
       竹の桿に縦じわのあるもので、珍しい種類の竹といえる。
    雲紋竹:ウンモンチク
       竹の桿に雲形の模様が散っているもの。
    煤 竹:ススタケ
       萱葺(かやぶき)屋根の垂木竹として、または、囲炉裏の天井にわら縄で縛り付けられて100年以上煙りに燥されたマダケを言う。
 煤竹の見所は、縄目が節にかかり、黄色く残っているもので、茶杓の最上の素材である。

    寅斑竹:トラフタケ
       竹の桿の模様が寅の皮膚のようになっているもの。
    欽 竹:キンチク
       
 

   ① 白 竹  ② 実 竹  ③ 胡麻竹  ④ 絞 竹  ⑤ 雲紋竹
 
   ⑥ 煤 竹  ⑦ 寅斑竹  ⑧ 欽 竹    
     
   
 次に上記①~⑤の竹を茶杓に仕立てるまでには、油抜き、日光に晒す、日陰で保存といった工程が必要になる。


竹の準備

   上記の⑥煤竹を除く竹を茶杓に仕立てるまでには、油抜き、日光に晒す、日陰で保存といった工程が必要になる。その工程について述べる。
  1) 油抜き
     11月下旬から12月に切出した竹を約60日(二ヶ月)ぐらい日陰で貯蔵する。
 油抜きは、炭火で行うのが最適であるが、石油コンロ、ガスコンロなどでも代用ができる。青い竹を灸ると表皮に竹の油が浮く、これを雑巾でふき取りながら全長に亘って行う。
 青い竹が、全体に僅かな青味、若しくは薄い黄色になるよう、また、節の部分に青味を残さないように灸ることが肝要である。
 注;石油コンロ、ガスコンロなどで行う場合は、炭に比べて火力が強いので、竹を焦がさないように注意が必要です。
  2) 日光に晒す
     油抜きした竹を日光に当てて、晒す。約一つ月ごとに日の当るところを変えながら、全体が自色になるまで晒す。この期問は、3か月程度は必要である。
  3) 日陰で保存する
     日光に晒すことが終った竹(白竹)を室内で目に当てないように保存する。期間は、6か月以上が必要である。
 竹を切出してから11か月~1年の時間経過が必要ということになる。

 

素材寸法の決定

  1) 「樋」とは
       素材寸法について述べる前に、茶杓(中節のものを「草の茶杓」という)の樋(ひ)について記す。
 竹が生えている姿で、節の付け根から枝が出ている部分の棹(カン)に凹がある。この部分を「樋」という。
 節から天に向っている樋を逆樋(さかひ)といい、節から地に向っている樋を順樋(じゅんひ)または本樋(ほんひ)と呼ぶ。
    逆樋
       逆樋は、概ね樋が深く変化に富んだ景色を呈するものが多いので、作意を表わすのに適している。しかし、中節の枝の付け根部分は、竹のすじが切れていて、裏側を薄く削り込むと折れ易くなる。
 この欠点を補うために厚みを残して、直腰(すぐこし)といわれる形に仕上げる。
    順樋、または本樋
       順樋、または卒樋は、節の部分ですじ(繊維)が切れていることもないので、折れることはない。
 マダケなどは2,3筋の樋があるが、実竹は深い単樋で、シボチクにも単樋が多いと思う。マダケ、ハチク、ウンモンチク、胡麻竹の順樋は浅く、幅も狭いものが多いのである。
  2) 寸法付けと切出し
    縦方向
      a)素材の節と節との間隔を計り、樋の具合をみて、順樋・逆樋の取れるところを見定めて切断すべきところに印を付ける。
      b) 中節から「おっとり」部分の長さは、11cm。節上の長さは、最短でも10㎝が必要である。合計21cm以上にする。
 但し、節上の長さは出来るだけ長くすることが、柾げる作業は行いやすい。
      c) 竹を輪切りにする。この時、竹の表面に“メクレ”を生じさせないよう、注意深く行うこと。
    横(幅)方向
       茶杓の幅は、擢先の一番広いところで1.5㎝位であるから、余裕を見て2.3~2.5㎝とし、樋を中心に鉈(なた)で縦割りにする。
    整形
       割った竹の裏側に残る節部分や、両角の鋭いところは、鉈で切り落す。
    柾げる位置
       横稜の高い方から7.5~8.0㎝を中心にして柾げるので、この部分に印(しるし)の横線を引く。
  3) 下削り
       きれいに枉げるため、あるいは意図する枉げを得るために、裏側の節上の部分を平らになるよう削る。
 但し、樋の裏部分は削らないこと。

 下削りを行った白竹の茶杓の材料
  左側2片 ; 逆樋
  右側2片 ; 順樋(樋は上)

  櫂先部(上節)を上にして、示している。
 
  節部分の拡大図